まどマギコラージュSS『地球光』

 最後の魔獣を倒して力尽きた私は、仰向けに倒れこんで空を仰ぎ見る。月の空には青い星が浮かんでいた。
「ああ、これが地球。なんて、――」
 余りの青さに言葉を失う私に、彼女の声がかかった。
『――綺麗、だよね。わたしね、あの星が、そこで暮らす皆が好きだったよ』
「……でもその星の為に貴女は消えてしまったわ」
 私を捨てて、という言葉は飲み込む。彼女の声が聞こえるということは、終わりが近いということだ。今更だ。それに、ようやく、また会えたのだ。見せるのは、笑顔でありたい。
『ごめんね』
「構わないわ。そんな貴女だから私は――」
 私は眩しさに顔を背ける。地球の背から太陽が顔を覗かせ始めていた。
 横を向いた私の目に、自分と同じように月の大地に寝転んで、手を握ってくれている彼女の顔が映っていた。いつかの、果たされなかった私の願い、2人の終わりの日のように。地球から溢れた太陽の光が私たちを包み込む。
「綺麗ね。まるで女神のようだわ」
 私はもう一度地球を仰ぎ見る。作った笑顔ではなく顔が綻んでいるのが自分でわかった。
『うん。美しい星だよ、ほむらちゃんが守ってくれた星、地球――』
 本当に、心の底から笑いが込み上げてくる。
「地球じゃないわ。貴女のことよ」
 そして暁美ほむらは、地球光の中で、眠るように瞼を閉じた。

庄司卓『ダンシィング・ウィズ・ザ・デビルズ3 女神のかけら』「地球光」…の脳内記憶より引用、コラージュ。