■
「でも、悲しいことも起きる。
彼女は悪くない。
彼女は頑張ってる。」
……って、『彼女と彼女の猫』か。
彼女の猫のように、彼女は悪くないと僕は思っている。
だから僕は彼女を助けてあげなかった、救ってあげなかった「彼女達」を憎む。
世界を憎む。神様を憎む。自分を憎む。
とりわけ、救えるはずなのに救えなかった彼女達を、憎む。
でも僕は知っている。
「彼女達」は彼女を救う。
いや、もうとっくに救っている。
それなのに「彼女達」を憎むというのは筋が通らないし、今更のように救ってくれと縋る必要もない。
「彼女達」は、悪くない。
八つ当たりをしてた。ごめん。ごめんなさい。
彼女は救われている。
でも僕はこんな結果が許せない。憎むべき対象を無理やり探している。
誰が彼女を死なせたのか。
何が彼女を殺させたのか。
「彼女は悪くない。」
「彼女は誰よりも頑張ってた。」
なのに誰かが何かが彼女を殺した。
誰かが彼女を殺した。
誰が、彼女を、殺した?
正しい問題に辿り着く。
とっくに気づいていたその答えに漸く目を向ける。
彼女を殺したのは、彼女自身だ。
悪い奴はいっぱいいる。
原因もたくさんある。
でも彼女を殺したのは彼女自身だ。
「彼女は悪くない。」
でも、一番悪いのは、彼女自身だ。
「なんで死んだんだ」
糾弾の言葉と憎しみをぶつける相手を見つけて、初めて僕は彼女の為に泣いた。
そして、彼女と、彼の為に泣いた。
僕は、僕ががここに帰ってくるきっかけになった数年前のMK2さんのエントリに、
ようやく追いついた。