まどマギ コラージュSS『ミッシングゲイト』







巴マミには、遠い親戚しか身寄りがいないわ。失踪届けが出るのは、まだ当分先でしょうね」








巴マミは孤児だったという。


魔法少女になる前の私は
魔女狩りで不在がちな友人と先輩、
鹿目まどか巴マミのことを
それとなく
彼女たちそれぞれのクラスメイトに聞いてみたことがある。


鹿目まどかには友人が多く
それなりの答えが返ってくる


しかし巴マミの事になると
殆どの人が言葉少なく
曰く――


「感情のない機械のような人だった」


インキュベーターに見出され魔法少女になる子供は、
身体、経済、家庭……、環境的に不幸であることが多い。
巴マミもそういう一人だった。


自動車事故で家族を失い、
遠い遠い親戚がいるだけの、
天涯孤独に近い身の上の中学生。


鹿目まどかに出会うまで、
誰に秘密を打ち明けることもない孤独の中、
ただ魔女と殺しあう日々を過ごした彼女の心中を察することはできない。
(今の私にはわかるような気もするが、
 私がこの胸に抱えるものと彼女のそれが
 同じだとは思わない)


「機械のような…」
と言われたのもそんな所に原因があったのかもしれない。


しかし私の記憶の中の巴マミ
いつも淹れてくれた紅茶のように温かく、
手作りの洋菓子のように
甘い笑顔をまどかや私に向けている。


それは彼女がまどかと出会い手に入れた
もう一つの世界?


それとも
私の記憶の中の幻?



かつて私を助けてくれた友だちも先輩も 仲間も
この時間軸にはいない。



この世界のどこか
誰にも知られることもなく戦い続け、
いつか弔う人もなく消えていく運命。


死を目前に契約を迫られ
誰もいない家に暮らし
人と馴染まず
時のない世界で
亡骸も残さず
ようやく死に還る


「貴女の一生はそれでよかったのですか?」


答えを知る術のない問いが
私の心を焦がす


まどかの流す涙がそれを
かきたてるのだ